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  • ①なぜ心拍計が必要なのか?

    負荷と運動時間とレスト(休憩)はトレーニングの永遠のテーマで、たとえば、走りの負荷は坂道の角度や速さ(タイム)でわかる。自転車の負荷はKPやケイデンス(回転数)でわかる。ウエイトトレーニングはプレートの重でわかる。しかしボクシングのパンチ力ははっきりとした数値がでません。 いくら選手がつらそうで、苦しくても、「苦しいふり」をしているかもしれないし、また、本当にギリギリでもそこでふらふらなら相手を倒せないのです。選手もトレーナーもサンドバッグの手ごたえやミットの衝撃などの「感覚」という不確かな情報しかありません。感覚も非常に大事ですが、多くの選手を管理し、その成長を確かめ、練習を選手の自信に変えるには「数値」が必要です。なんとか「打撃」を数値にできないものかと考えていました。 その時に出会ったのが「乳酸」です。乳酸は力を出さないと出ない。後述しますが、軽いパンチだとどんなに苦しくても乳酸値は低いのです。 そこでどんな練習で乳酸値出るのか、どの秒数で一番高い数値が出るのかを乳酸測定器を購入して徹底的に調べました。トレッドミルで各選手乳酸値測定を行い、LTやOBLA(後述)を出しました。 針を刺して血を取らなければならない血中乳酸値を測るのはなかなか大変ですし、サーキットやドリルの間にいちいち計ってられません。そのため、ほぼ類似する動きを示す心拍数を指標とすることにしました。

    運動生理学

    運動のタイプの分類

    ①動くためのエネルギー ATP

    体は精密機械のようなもので、とても複雑なシステムで動いています。私たちは運動生理学の専門家を目指すわけではないので、つっこみ上等、細かいことは省いてざっくりと説明します。 まずは体がどうやって動いているか。筋肉の伸縮ですね。その筋肉を収縮させるにはATP(アデノシン3リン酸)という物質を使います。ATPとはアデノシン3リン酸という名前の化学物質で、文字通り、アデノシンに、リン酸が3つついたもの。3つついたリン酸の一つが外れ、ADP(アデノシン2リン酸)になるときにエネルギーが放出され、筋肉を動かしているのです。 ATPは筋肉や血液等にありますが、3~5秒の運動でなくなってしまう量しかありません。「ATPがなくなる=動けない」ということですから、運動をするとき、体はいろいろなことして、再びATPを作り出します。

    ATP分解の図

    ②3つのATP再合成システム

    「運動」には、歩くなどの日常生活から、走る、または重いものを一気にあげるなど、その強さは様々です。ATPは運動の強度によって再合成の方法が違います。
    そのATP再合成システムは、大きく3つに分けることができます。ATP-PCr系、解糖系、酸化系です。 わかりやすく陸上競技で簡単に説明すると、ATP-PCr系は100m走などの短距離、解糖系が400~800m走の中距離、酸化系がフルマラソンなどの長距離で使われる供給システムです。これは「100mがATP-PCr系だけで他のシステムが使われない」など、きれいに分かれているわけではなくて、「主に」という意味です。図1のように、運動時間と強度によってこれらの代謝全体に占める比率が変化していきます。

    エネルギー代謝

    ●ATP-PCr系

    ATPは前述のように、3秒ちょっとでなくなってしまう量しかありません。そこで、筋肉の中にあるクレアチンリン酸の登場です。クレアチンリン酸は、ATPと違い、直接筋肉を動かすエネルギーとはなりません。しかし、PCr(クレアチンリン酸)をPとCrに分解するエネルギーを利用して非常にすばやくATPをつくることができるのです。そのため、クレアチンリン酸はATPの備蓄といえます。(ミトコンドリアからATPができますが、ATPは不安定なため、一度クレアチンリン酸になり、エネルギーを運びます。そしてクレアチンリン酸から再びATPを作っているのです。)運動を開始した直後や、強度が変わった時、10秒以内の瞬発的な激しい運動で使用される再合成システムです。 筋肉中に含まれるクレアチンリン酸の量に限りがあるため、すぐに枯渇してしまいます。枯渇したクレアチンリン酸はすぐに再合成されますが、完全に回復するのには約1~3分かかるといわれています。

    格闘技ではタックルやラッシュ、強打でクレアチンがつかわれ、パンチを打っていないときにクレアチンリン酸が再合成されています。

    ●解糖系

    糖系では、糖(筋肉中のグリコーゲン、血液中のグルコース)をピルビン酸に分解する過程でATPをつくります。 過剰にできたピルビン酸は乳酸になります。この乳酸が筋肉を酸性にするために酵素反応や筋収縮を阻害するために長時間運動できません。個人差がありますが60秒程度持続します。
    糖や脂肪からATPは作られます。しかし、糖は水に溶けるということ、そして脂肪は脂肪細胞にあり、糖はグリコーゲンとして筋肉に貯められているという理由のため、脂肪より糖のほうが使いやすいのです。そのため、運動強度が高くなると脂肪に比べて糖のほうが利用しやすいため、糖の利用割合が増加します。

    ●酸化系

    体は安静時や日常生活やジョギングなど強度の弱い運動では、酸素を使いながら糖や脂肪からせっせとATPを作り続けています。この時ATPは主にミトコンドリアという細胞の中にある器官でつくられます。 また、解糖系でできるピルビン酸を、酸素を利用して二酸化炭素と水にまで分解し(酸化)、その過程でATPをつくります。パワーは弱いですが、酸化系は解糖系のように、乳酸等が出ないため、長時間運動できます。

    強度の増加による脂肪

    ここまででよくわからなかった方、とりあえず「体を動かすにはATPを使い、そのATPは運動強度によって3つの作り方があるんだ。」とざっくり覚えておいてください!

    さて、「強度」と「運動時間」が大切な要因だとわかってきたと思います。(さらにレスト(休息)がからんできます。) ここで重要なのは、「戦っているときの強度」と「戦ってる時間」です。ラッシュしているときと、フットワークをして相手をいなしているときの強度は違います。試合時間は数十秒で終わるときもあるし、ボクシングの世界戦にいたっては30分をゆうに超えたりするのです。逆に陸上では100m・400m・マラソンの強度はほぼ一定ですよね。競技時間もほぼ決まっています。しかし格闘技ではATP-PCr系、解糖系、酸化系、すべての再合成システムを鍛えないといけないのです。

  • ②山田式心拍トレーニングの一例

    最大心拍の80%⇔最大心拍の92%×30セット
    シャドウのみ30セット or
    (ロープダッシュ→シャドウ→サンドバッグ打ちを10周)or
    (シャドウ→サンドバッグ打ちを15周)

    陸上でいうと、短距離(200m)のインターバル走です。心拍にもいろいろな上げ方がありますが、この練習は200mを駆け抜けるイメージでできるだけはやくあげます。
    スタミナに自信のない方、初心者の方は10セットから始めましょう。最初はとりあえず心拍を上げることに集中してしまってめちゃくちゃな動きになってしまうかもしれません。慣れてくると、コンビネーションや出入りなどいれた「試合の動き」で上げられるようになってきます。

    ①ロープやシャドウで最大心拍の85%ぐらいまでアップする。
    ②そこから80%に落ちたところからスタート。
    ③92%まで上がったらレスト。(92%でストップなので、これよりも心拍数は上がります。)
    ④80%に落ちたらまた92%まで上げることを繰り返す。

    EX)心拍練習鍛練者 最大心拍184
    設定心拍数 184×80%=147 ⇔ 184×92%=169
    この練習での最高心拍数 180
    設定心拍数に入れるまでの平均タイム 25秒
    レスト平均タイム 55秒

    しっかり駆け抜けているためレストの間も心拍は上がり続け、この練習での最高心拍は設定よりも高くなります。すぐ落ちるので、頂はこんもりとなります。

     
    心拍図1

    ※10セット抜粋しました。

    EX)心拍練習非鍛練者
    ギリギリ一杯で上げているため、MAXは設定心拍とほとんど変わりません。レストの時間は長くなるため山は左急斜面になり、先端はとがります。また、レストの時間にもばらつきがあります。
    最大心拍184
    設定心拍数 184×80%=147 ⇔ 184×92%=169
    この練習での最高心拍数 171
    入れるまでの平均タイム 35秒
    レスト平均タイム 1分15秒

    心拍図2
  • 山田式心拍トレーニング GONG連載紹介

    UFCファイター川尻達也×山田武士スペシャル対談
    たっつぁんに聞いてみた!! 心拍トレの効果って本当のところどうなの!?

    山田
    心拍トレーニングをやっている選手の話を聞きたいっていう要望がきたのですが、川尻選手に聞いてもいいですか?
    川尻
    なんすか、その口調(笑)もちろんいいっすよ!
    山田
    どうですか、心拍トレーニングは?
    川尻
    どうですかって知ってるじゃないですか(笑)めちゃくちゃキツイですよ。俺、一回黒船辞めようと思いましたもん、本気で。
    山田
    マジで!?いつ?
    川尻
    山田さんが資格取って本格的に心拍トレを初めて、85%⇔93%だったかな?のメニューをやらされたときですよ。どんだけやっても目標心拍にいかなくて、久保田さん(トレーナー)が心拍計見ながら「あと、5つです。まだです。って延々やらされて。俺はあがらない体質なんだから無理だろって。
    山田
    心拍低いのは知ってるけど、パーセンテージだから関係ない。そもそも走りやスパーで出してる数値じゃん。
    川尻
    いや、それでもめっちゃきつくて死にそうになって。山田さんは「あがらないわけねえ!」って言うし。もうむかついてきて、こんなのできないし意味ないから、絶対辞めてやるって決めて。
    山田
    辞めなかったね(笑)
    川尻
    これで辞めたら逃げてるようなもんじゃないすか!できる人がいるわけだし。「くっそー!なんで俺は高く出せないんだ?」って、すげえ悔しくてT-BLOODで、一人で研究してました。心拍計を見ながら動きまくって、どうしたらあがるんだろうって。
    山田
    そんなことやってたの!知らなかった。
    川尻
    で、心拍があがってるときって、まさに試合で自分がしてるスタイルだって気付いたんですよ。それなのに練習だと、俺はその動きをやってなかったんだって。今までも本気で追い込んできたつもりだったけど、強度が全然低かったんだと。
    山田
    そうなんだよ!試合では誰でも心拍数が上がる。だから、連載(第3回)でもやったけど、シャドウってすごい大事でシャドウで心拍をあげられるようにならないと試合のスタミナはつかないんだよ。じゃあ、心拍トレーニングの効果ってどれくらいで実感した?俺は、マスのときに、できるだけ高い心拍数を出すようにしたんだよね。そしたら1~2週間ですぐにスパーで疲れなくなって。あ、これだって。高い心拍で動き続ける練習をしなきゃいけないんだと。
    川尻
    効果が実感っていつかな・・しばらく心拍練習して、走ってみたら、以前のきつくてやりきれないメニューがあったんですけど、それが普通にできて。走ってないのにスタミナついてるじゃんって。これすごいぞと。
    山田
    スパーや試合ではどう?
    川尻
    へたれなくなりました。だからいつも冷静でいられてスタンドで全然消耗しなくなって。今まではタックルとれないと慌てちゃって、立たれちゃうと結構きつかったけど、今は立たれたらもう一回倒せばいいかみたいな。あと、心拍練習で一番でかかったのは自分がどういう人間なのかわかったってことが大きいです。試合で、●●●して××だと俺はヘロヘロになっちゃうんだとか、○○で、△△したらずっと高い位置で戦っていられるんだって明確にわかったことですね。・・あ、ここ書かないでくださいよ!
    山田
    書かねえよ!俺が弱点広めてどうすんだよ(笑)体質はどんなにやっても変えられないからね。今の自分に備わってるものを磨くだけ磨かないと。できないことをやらせる練習しちゃダメだから。心拍トレいいよね!
    川尻
    いやいや、すごい良いですけど、強度高いから最初寝込みましたよ!
    山田
    そうそう、心拍始めた時、みんな寝込んで練習休んだよ。児山もナオキックも動けませんて(笑)やってくうちに慣れてくるけど。今はアマチュア選手もいっぱい来てて、ちゃんと階段昇らせるような強度設定してるし。でも全然選手紹介してくれないね(笑)
    川尻
    黒船はきついから紹介できないんですよ。どうせ紹介しても、来なくなっちゃうだろうなって。練習はきついのは当たり前でそこから逃げてたら強くなれないと思うんですけどね。よく「どうやったら強くなるの?」って聞かれるんすけど、「お前が合コンしてる間に練習してんだよ」って思いますもん。別に変ったことはしてなくて、死ぬ気で毎日いっぱい練習してるだけ。
    山田
    俺も「勝ちたい、強くなりたい」って、言ってる人が、言うほど努力しないのが不思議でしょうがないんだけど・・でもみんながやらないから、川尻君がトップにいて、俺も少しは注目されてるんだと思う。みんな楽したいんだよね。
    川尻
    楽なのと苦しいのがあったら、楽なほうには流れないで、こう、苦しい方に縒ってって縒ってって・・って感じで黒船に通ってます(笑)でも、一回でも負けると結構取材のとき言われるんですよね。山田さんのとこだけで大丈夫かって。ま、こんな直接的には言わないですけど(笑)「他のジム行ってみたら?●●選手は何々始めたよ。●●選手はどこどこ行き始めたよ」・・・暗にあそこでいいの?って(笑)
    山田
    俺、嫌われてるのかな?(笑)でもぶれずにもう6年?長いな~。なんか今いろんなとこ通ってる選手多いもんな。うちも所属があってきてる選手が多いから、出稽古がダメだとかって意味ではないし、ボクシングジムでしっかり打撃を学ぶのはとてもいいことだと思う。でも前は週3の選手が多かったけど、今は最初っから週一の選手もいて。もっと来たらって言っても、所属ジムだけじゃなくて、打撃はここ、ウエイトはここ、何曜日はプロの合同練習、他に体幹トレーニングだとか、アジリティーだとか、バランスだとかしてて空いてないからって。
    川尻
    パーソナル受けたりする選手増えましたね。俺は黒船に週3通ってるけど、これってすごいお得ですよね。月謝1万だから・・一回800円ぐらい(笑)で、パーソナルみたいに俺専用のメニュー毎回出してくれるし。実際、週一って頻度どうなんですか?そういうプライオメトリックとか、体幹とかもどうなんですかね?やってる人多いけど、俺はよくわからなくて。
    山田
    800円て。安いな(笑) 土居先生の勉強会で学んだんだけど、ウエイトでも走りでも週一だと現状維持だって。俺のとこは月謝だから、週1だろうが週5だろうが値段は一緒なんだよね。うーん、本当は「週一でも劇的に強くなります!」って謳って金儲けしたいけど、教えたことを持ちかえって練習して自分のものにするには経験が必要だと思うんだよ。来ないよりはもちろんいいし、絶対に向上はさせるけど、キャリアがある選手ならともかく駆け出しの選手はきついかな。週1のパーソナルを全然否定するわけではないよ?でもやっぱり俺は性格的にも無理なんだよね。命を預けて欲しいと思うから。勝ったら選手の実力で、負けたらトレーナーのせいだと思うんだよ。だからちゃんと選手と向き合って、背負いたい。あと、これは本人の問題だけど、体幹通ってるって言う選手にベンチやらせたら、自体重も上げられないんだよ。それは違うんじゃねえかと。行って金払ったことで安心してねえかって
    川尻
    ですよね!まず最低限の体できてないと、他に手を出しても意味ないと思うんですよね。
    山田
    なんでも突き詰めて限界の側に見える光があるんだと思うから。やっぱり苦しい思いしないと。
    川尻
    心拍練習は俺にはすごい合ってると思って。数字とかで伸びてるのがわかるの、俺は好きなんですよ。年末までにスクワットで何キロをあげるって決めて、やりましたからね。それは格闘技に直接に関係があるかないかじゃなくて。きつくても絶対やりきるんだっていう、そういう気持ちの面で向上していかなきゃいけないと思うんですよ。今はもうその重量あがらないですけど(笑)
    山田
    川尻くんは数字勝負の陸上の世界にいたわけだもんね。陸上でも格闘技でも同じことで、数字数字っていうけど、やっぱり気持ちで、困難にどう立ち向かえるかだよね。 俺も数字だされるとムキになるタチで。タバタでも、心拍計付けてるときと、付けてないときって雲泥の差だよね。
    川尻
    はい。つけてないとき楽してるわけじゃないんですけどね。つらい肉体的な追い込み練習よりも、技術練習ばっかりする人もいるじゃないですか。テクニックって言っても、フィジカルがなかったら意味ないですよ。タックルでも手の差し方がどうだとか、足の位置がどうだとかいうけど、俺が思いっきりタックルドーンッていったら倒されちゃうんでしょっていう。
    山田
    コンタクトスポーツだから、まず体ありきだよね。「川尻は体が半端なく強いからしょうがない。」ってフィジカルを言い訳にするする人ほど人並み以下にしか鍛えてないんだよな。それに、フィジカルVSテクニックっていう図式だけじゃないと思う。どんなに技術っていってもさ、たとえば、ジャブはこうやってガードして右返すって技術を学んで、それをスパーでやろうとするじゃん?でもパンチがある人間のジャブをガード上から一回でも受けて「え、こんなにパンチあんの?」ってびっくりしたら、ブロックなんかできなくて下がっちゃったりするんだよ。そういうのが格闘技の面白さだし、こうきたらああする。足し算引き算、答えはこうなんて、そうそうできないことなんだ。こんなこというと筋肉バカみたいだね(笑)技術を無視しているみたいだけど、実は俺はテクニシャンなんだけどな~。
    川尻
    顔つきがテクニシャンじゃないですよ(笑)俺はテクニシャンですけど!!
    山田
    そんな冷蔵庫みたいな体して?
    川尻
    今は65に落としたんでクーラーくらいですよ(笑)
    山田
    じゃあ、二人ともテクニシャンってことで(笑)でも川尻達也はホント積み重ねの人間だよね。この日々の努力と積み重ねが、今もまだ生き残っている一番の要因だと思うよ。川尻くんと知り合って、2人が練習を休んだ事って本当に少ないよね。ま、ジジィになってから休めばいいよ(笑)今年も走り抜けましょう。よろしくお願い申し上げます!
    川尻
    こちらこそよろしくお願いします!!
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